人工股関節全置換術

手術時間 30−40分
(ロボット支援手術:45分~1時間)
出血量 200cc
入院期間 4日~14日程度

当院では約9割の患者様が人工股関節置換術の前外側アプローチ(股関節の前側から切開を行う手術法であり、筋肉を切開することなく手術を進めるため、リハビリ期間の短縮や術後疼痛が減少されており、入院期間も2週間以内が多い)で行っております。このアプローチを用いた手術時間はおよそ30~40分で、出血量は100㏄程度です。術後2ヶ月もすれば、術前とは比較にならないほど良好な股関節となり、満足される方が多いです。しかし、手術ですので一定の確率で合併症は起こり得ます。

合併症

感染

手術時間の短縮とともに、感染することは少なくはなりましたが、ゼロではありません。歯科領域の感染巣の有無のチェック及び定期的なクリーニングは各自お願いいたします。

深部静脈血栓症

人工股関節置換術後の深部静脈血栓症の発生率は30%と言われております。小さいものであれば、何も症状は出ませんが、大きな血栓が浮遊し肺に詰まると致死的になることがあります。可及的早期にリハビリ、術直後は足関節の運動、深呼吸をすることを心がけてください。

脱臼

現在まで前外側アプローチを行った1400例中、脱臼は転倒により脱臼した1例(0.07%)のみであります。ただし、高度の骨欠損を伴う症例や、セメントを使用しなければならないほど骨が弱い方は、後方アプローチという筋腱切離を伴う手術を行います。その際には、理学療法士の指示通り、動作制限を3ヶ月はしっかり守っていただく必要があります。 

骨折

前方アプローチを用いた人工股関節は、後方アプローチを用いた手技よりは骨折が起こりやすいと言われています。術前に骨の脆さが危惧される場合、後方アプローチにてセメントを使用し手術を行っております。

血管損傷

ごく稀ではありますが、高度の変形を伴う症例や、以前の股関節手術の既往のある方は十分に注意する必要があります。

高度変形例

コンピューターの進歩により、人工関節の手技が大きく簡易になり、高度変形例であったとしても、術中迷うことなくCupを正確に設置することができ、手術時間、手術侵襲が低減され、高度変形例においても両側手術が可能となりました。脚短縮が著しい場合や臼蓋骨欠損が高度な場合、後方アプローチにて手術を行っております。

図1-1 術前 64歳男性
図1-2 術後 両側同日手術
手術時間 3時間30分 出血 980ml

術後6週退院時の歩容

臀筋内遊離短縮骨切り例

短縮骨切りを必要とする様な難易度の高いCrowe IV に対するTHAもCASを用いたTHAを行うことにより、安心して原臼蓋にCupを設置することが可能であり、両側同日に手術を行うことも可能。

図2-1 80歳女性
図2-2 両側同日手術
手術時間 4時間30分 出血量 867cc

術後3ヶ月 退院時歩容

Muscle and physical functions after one-stage total hip arthroplasty with shortening subtrochanteric osteotomy in an old-old patient with bilateral Crowe IV developmental dysplasia dislocated into the gluteal muscles: a case report.

臼蓋骨腫瘍Harrington手技

臼蓋に広範な腫瘍性病変を認める患者に対し、ナビゲーションを用いてスクリュー挿入位置を正確に計画・実施し、Harrington 3-pin法による股関節再建術を行います。

図3-1 74歳男性 原発不明癌
強い夜間痛を認め、歩行不能な状態であった
図3-2 術後X線画像
手術時間:2時間50分、出血量:350 mL
図3-3 術後CT画像
術前計画どおりのScrew配列が可能であった
図3-4 ナビゲーションを用いたスクリュー挿入位置の術前計画

術後2週時点での歩行状態。
夜間痛は消失し、オピオイド鎮痛薬は減量可能となった。

人工股関節再置換術

手術時間 症例により大きく異なりますが1.5時間〜5時間
出血量 症例により異なる
入院期間 6週間

人工股関節ゆるみ

従来型のポリエチレンを使用した(2000年以前)人工股関節で20年から30年経過した症例では、時として、人工関節の周りで広範に骨欠損が起こっている場合があります。
その様な症例では、施設内Bone Bankにより作成した骨を骨欠損部に補填しK-T法やIBG法により再建を行っております。今まで130例ほど行ってまいりました。 

K-T 法 骨欠損が広範な場合

実例

図4-1 術前 65歳女性 初回THA後44年
臼蓋及び大腿骨側に 広範な骨欠損を認める
図4-2 術前CT  CT上も広範な骨欠損
図4-3 術後 手術時間 4時間20分
出血量 780ml
図4-4 術前 全下肢
図4-5 術後 全下肢
術前にあった脚長差も改善した

術後1週間での歩容 術後3週で退院となった

IBG法 骨欠損が中等度、もしくは大腿骨側

実例

図5-1 77歳女性 MOM-THA
術後5年 Cup周囲に緩みを認める
図5-2  術後 手術時間 3時間10分
出血810ml
図5-3 術後3年 移植骨は同化している
現在も卓球を世界大会level で楽しんでいる

人工股関節周囲感染

人工関節の合併症でも述べましたように、人工関節は感染することがあります。
人工関節周囲感染に関しては2期的に手術を行っております。 
一度感染した人工関節を抜去し、セメントモールドという抗菌薬入りのセメントを留置し感染を鎮静化した後(約2ヶ月後)再建いたします。その間、車椅子乗車は可能ですが、荷重は許可できませんので通常入院が長期に及びます。最も経過がいい方で、2ヶ月半の入院を要します。

実例

図6-1 他院にて人工関節
家族の希望 北海道より受診 70歳男性
図6-2 CT 感染により
Bone-Cement間で 広範な緩みを認める
図6-3 人工関節抜去 セメントスペーサー
留置 2ヶ月後感染は制御できた
図6-4 臼蓋は広範に欠損しており
KT 、大腿骨側はIBGを行った。
手術時間 3時間、出血 642ml

再建後術後3週退院時の歩容

人工股関節周囲骨折

人工関節の施行件数の増加及び、高齢化により人工関節周囲骨折が増加しています。
どの様な骨折かにもよりますが、もともと歩行が可能であった患者様には、可及的早期の荷重歩行を目指し、再置換術を行っております。 

図7-1 86歳女性 1983年初回THA
2008年 revision
2024年 転倒受傷
図7-2 再置換術
手術時間 2時間7分 出血量230ml

術後2ヶ月 退院時歩容 T字杖1本にて退院