薬薬連携

現在、安全な薬物療法のために、地域の薬局薬剤師と病院薬剤師の連携を強化する試みが重視されてきています。そこで一番のポイントがお薬手帳です。これにより入院中に変更になった薬剤や副作用の出た薬剤の名称等を薬局薬剤師にも伝えることができ、安全に薬剤を提供できます。さらに、入院時に院外薬局で貰っているお薬手帳をお持ちいただくことで、服薬歴・中止薬や用法用量・副作用歴等を確認できますので、必ずお持ちください。

ジェネリック医薬品について

当院では一部の医薬品についてはジェネリック医薬品を推奨しています。これは高騰する医療費を抑制するために厚生労働省が勧めているものです。最初に薬剤を開発した会社の医薬品を先発品と呼びますが、15年間の特許が認められています。そこで15年立つと特許が切れて、他のメーカーも同じ成分を生成・販売できるようになります。特許申請のために成分の抽出方法まで公開されているので、生成事体は容易です。先発品は開発に多額の資金が必要なため高価ですが、ジェネリック(後発品)はそれがないので安価に製造できます。品質は厚生労働省が確認していますので、同一の物質と言えます。しかし当院では、各ジェネリックメーカーによって、その信頼性や安定供給が見込めるか等の条件が異なるため、その点を考慮しジェネリックへの切り替えは一部の医薬品に絞っております。変更のあった際にはご理解をお願いします。

薬剤の用法用量を守る理由

日本の医療機関で使用される薬剤はすべて(数千例の)臨床試験によって、安全で有効な薬剤量を確認しています。それを超える量の薬剤が一度に体内に入ると様々な副作用の危険度が増してしまいます。医師や薬剤師から伝えられた用法用量は必ず守りましょう。
また、漢方や多種多様な民間薬等で、自然から抽出された物は有効な上に副作用が無いという噂がありますが、決してそのような事はあり得ません。身体の活動に影響を及ぼす物質であれば、すべからく副作用は存在します。逆に言えば副作用の無い物質は効果も無いと言っても過言ではありません。たとえば免疫力を向上させる物質があったとすると、風邪等の感染症は減るかもしれませんが、逆にアレルギー疾患が発病したり悪化したりするかもしれません(アレルギーは不要な免疫活動によって起こるものです)。だからこそ多くの臨床試験を行って、より安全で有効な使用方法を確認するまで、保健適応にはならないのです。
病院で治療中の患者様が民間薬を使用する場合、物によってはお薬の効果を減弱したり副作用を増強する場合がありえます。
必ず医師や薬剤師に御相談下さい。

薬を飲むタイミング

朝起きてすぐ。朝食の30分以上前を意味します。

代表的な薬剤 理由
一部の骨粗鬆症の薬:
ボナロン・フォサマック・
ベネット・アクトネル
まったくの空腹時でないと、吸収が極端に悪くなるため。30分間横になってはいけないのは逆流による食道の炎症を防ぐためです。

食事の20~30分前。

代表的な薬剤 理由
一部の糖尿病の薬:
オイグルコン・グリメピリド
食事による血糖の上昇と薬の効果の表れるタイミングを合わせるため。ただし、飲み忘れや飲んだ後に食事を忘れて低血糖になる可能性を考慮して食後にするケースもあります。
一部の抗真菌薬:
イトリゾール内用液
カプセルや錠剤と違い、空腹時の方が吸収が良くなるため。

食事を食べる直前。

代表的な薬剤 理由
一部の糖尿病の薬(αグルコシタダーゼ阻害剤):
ボグリボース
糖分の吸収を遅らせるため。食直前でないと効果がなくなります。
一部の糖尿病の薬(速効型血糖降下剤):
スターシス・グルファスト
食事による血糖の上昇と薬の効果の表れるタイミングを合わせるため。効果発現が早いため、食直前で丁度良くなります。
一部の腎不全用薬:
レナジェル
食事中のリンを吸着させて、体に吸収できなくする薬のため。

食事を食べた後すぐ

代表的な薬剤 理由
一部の抗真菌薬:
イトリゾールカプセル・イトラコナゾール
食事による胃酸分泌の上昇や食事中の脂肪分の影響で吸収が良くなるため。
一部の腎不全用薬:
カルタン・沈降炭酸カルシウム
食事中のリンを吸着させて、体に吸収できなくする薬のため。

食後30分以内に服用

代表的な薬剤 理由
多くの薬が食後になっています。 主な理由は服薬を忘れないためだけに食後になっています。一部空腹時だと吸収の悪くなる薬もあるので気を付けましょう。影響のない薬の場合、他のタイミングの薬に合わせて統一することもあります。

食事中ではありません。食後2時間後を意味します。

代表的な薬剤 理由
一部の腎不全用薬:
クレメジン
球形吸着炭で、様々な電解質を吸着させる薬で、食事や他の薬が一緒だと、目的外のものまで吸着して吸収できなくする為。透析導入を遅らせる腎保存期の薬です。
血中カリウムを下げる薬:
アーガメイトゼリー
食後でもかまいませんが、腸管のカリウムは血中と常に平衡移動いているため、空腹時でもかまいません。

床に就く直前です。

代表的な薬剤 理由
睡眠薬:
ゼストロミン・ハルシオン・ゾルピデム
睡眠を促す薬の為。効果発現に30分程かかります。注:お酒と一緒に飲むのはやめましょう。服用後に歩き回ると転倒の恐れがあるため、床に就いてから飲みましょう。
下剤:
アローゼン・センノシド・ラキソベロン
寝る前に飲むことで、翌朝に効果が出るため。
一部の胃薬:
パリエット・ランソプラゾール・プロテカジン・アルタット
消化管は寝ている時が一番活動するため、朝方に胃が荒れる方にはこのタイミングで胃酸分泌抑制剤を出します。

上記一覧は代表的な物です。他にも色々と特殊な薬剤があります。又、患者様の状況や服用薬の組み合わせから、タイミングを変えるケースもありますので、医師・薬剤師からの指示を守って服用しましょう。もしこの表と違う指示があれば、医師・薬剤師に御質問下さい。
また、正しい服用タイミングに飲み忘れてしまった場合、それぞれの薬剤によって対処がことなるので、自己で判断せず、必ず医師・薬剤師に御相談下さい。

特定の食事に影響を受けるお薬

前項では食事全般の影響に合わせて、服薬タイミングを変えているお話しをしましたが、お薬の中には特定の食事や飲み物と相性の悪いものがあります。
ここでは、代表的な物について述べたいと思います。

高血圧治療薬・狭心症治療薬・抗不整脈薬・免疫抑制剤・睡眠導入薬・抗ヒスタミン剤・卵胞ホルモン剤・覚醒剤・強心剤 ・抗生物質・抗真菌剤等のうち、すべてではありませんが一部のお薬が影響を受けます。グレープフルーツに含まれる成分によって、肝臓のお薬を分解する酵素の働きが抑えられてしまい、一部のお薬がより多く効いてしまうことになります。詳しくは薬剤師にお聞き下さい。また、具体的にグレープフルーツ内の何が影響を与えているかは現段階では諸説あり、皮に多く含まれるだけなので、実を食べる分には影響ない
との説と、実にも入っているので実を食べるのも避けるべきとの意見があります。影響の大きさは薬によっても異なりますが、大きいものだと2~3倍服用したのと同じ位になるものもあるそうです。

心筋梗塞や脳梗塞など、血管の詰まる病気になった人、なりそうな人(人工血管使用・不整脈等)にでる、血液を固まりにくくするワーファリンというお薬があります。これはビタミンKの働きに拮抗することで効果を出すもので、ビタミンKを大量に取り込むと効果が減弱します。
特に納豆はそこに含まれるビタミンKだけでなく、納豆菌がしばらくの間腸管内で新たにビタミンKを作り出すことが分かっており、タイミングにかかわらず、納豆は食べるべきではありません。

殆どのお薬の分解を遅くすることが知られています。特に糖尿病薬・抗うつ薬・睡眠薬等は影響も大きく、注意が必要です。できれば薬を飲む程の体調不良があるのであれば、お酒もたばこも避けるのが望ましいです。

一部の医薬品の吸収を高めたり、遅くしたりします。主に脂溶性のお薬でビタミンAやビタミンE角化症治療薬、抗真菌薬・抗生物質の一部に影響が知られています。
くわしくは医師や薬剤師に確認しましょう。

鉄剤は濃いお茶と飲むと吸収が悪くなることが知られています。
また、多くの薬剤はお茶での服用を想定しておらず、確認がされていません。
分かっていなくとも、お茶やジュースで影響のあるお薬が無いとは限りませんので、すべてのお薬は水か白湯で飲むのが一番確実です。

特定の食事に影響を受けるお薬

薬によっては、錠剤の膜やカプセルに特別な工夫がされていて、胃で溶けずに腸で溶ける事で効果を出す物や10時間以上かけてゆっくり溶け出す事で丁度良い薬剤量をコントロールしているものがあり、潰す事で薬効が強く出たり、効果を無くす恐れがあります。飲み込めない場合には医師や薬剤師に相談しましょう。

薬はその時の症状に合わせて、医師が処方した物です。同じ症状だと思っても、実は別の病気だったり、痛み止めや熱さましはその症状を抑えるだけなので、それによって耐えたために病気が悪化する事もあります。使わなかった薬はすぐに捨てましょう。

薬はあなたの病気に合わせた物です。痛み止めや熱さまし、肌荒れや目薬、シップ等、表面上は同じ病気でも原因が違うなどで適する薬が違う場合があります。また、それにより健康被害が生じた場合、正規の処方で無いため、国の補償を受けることができませんのでご注意ください。